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中上級障害馬術講習会 開催レポート

 平成29年度の中上級障害馬術講習会も栃木県の壬生乗馬クラブ [1]で2月17日と18日の2日間にわたって開催されました。開催当日、澄み切った青空の下、10名の講習生が自らの騎乗技術の向上を目指して集いました。

<鶴見先生の指導を熱心に聞く受講生>

 本講習会は毎年募集要項が出るとすぐに申し込みがあり、今年も定員が埋まるほどの人気ぶりでした。講習期間中は連盟主催の大会において貸与される馬たちに跨って講習を受けられますが、さらに運が良ければ、普段は乗る機会のない中障害以上に出場するレベルの馬に乗る機会にも恵まれます。講師である壬生乗馬クラブ代表の鶴見利光氏(以下、「先生」)の豊富な知識と経験に裏付けれた指導と個々の個性を見抜いた上での独特の指導法は、短時間で実戦的な技術向上が期待できるということで、リピーターも多く、受講生は皆期待に胸ふくらませて当日を迎えました。

 初日の1鞍目は、準備運動として簡単なフラットワークの後に障害練習から始まり、まずはクロス障害を右手前と左手前から飛越し、馬の動きの中での平衡点を取りながら、最小限での静かな働きかけによって、個々の騎乗馬のペース、アプローチ、飛越の感触を確かめました。

<クロス障害>

 続いては、今回の講習会の根幹である「人馬のバランス」と「馬をコントロールしやすい状態にする」を実現するためのジムナスティックです。

 3つの連続障害を設定して、通常のペースなら障害間を4歩で走行するところをあえて歩幅を詰めて5歩にします。1歩多いことで、慎重かつ静かに最初の障害に向かっても、飛越した後の人馬のバランスによってペースが上がってしまう傾向になります。

 特に第2障害を飛越した後、第3障害までを5歩に抑えるのが非常に難しく感じました。

<2鞍目の騎乗>

 馬を替えた2鞍目も同じジムナスティックを取り入れたトレーニングを行いました。先生は一貫して馬という生き物が生得的に持つ、自ら動きのバランスを取るという性質を前提とした上で、騎乗者の働きかけにより、馬がどういった反応をするかを騎乗者に示しながらご指導下さったことが印象的でした。

 2鞍騎乗した後は、クラブハウスで先生の講義が行われました。その日のトレーニングで受講生が体験した内容を踏まえ、今度は理論的な観点からの講義で、受講生は真剣に耳を傾け、講義の最後は活発な質疑応答もありました。

 先生は「騎乗者のいいバランス」「コースに合った速度」「人馬のバランス」に焦点を当てながら、私たちの騎乗技術にすぐにでも生かされる内容を受講生がイメージしやすいように、椅子を馬に見立てて「座り」を解説、また手綱を操る動作についても「馬の口は宝物」「コーヒーを置くように静かに」と日常生活から感覚的に私たちが理解しやすい言葉で表現されていました。また連盟主催の大会での、コース走行3分前の準備運動での留意点のお話もあり、騎乗技術だけでなく、大会での好成績を狙う受講生達にとっても、大変有意義な講義でした。

 <講義の様子>

 夜は恒例の懇親会。鶴見先生オススメのお店で美味しい料理に舌鼓を打ちつつ、先生のヨーロッパでの馬の買付けの話を聞き入ったり、講習生同士の親交を温めながら、楽しい夜を過ごすことができました。

 2日目は騎乗する馬を替えて、1日目のおさらいとしてジムナスティックを行いました。特に馬体が起きて後肢に重心がかかるような駆歩を目指して先生の丁寧な指導の下、それぞれ感覚を研ぎ澄まして運動を進めました。

 ジムナスティックの後はいよいよコース練習。コース練習では歩幅を詰めるために我慢していたジムナスティックとは違って、通常のペースでの走行です。一人一人に先生から与えられた課題(飛越時の姿勢、駆歩時の騎乗者の腰の使い方、拳のクセ、騎乗に対するイメージの修正など)を意識しながら騎乗しました。走行中の先生の的確なアドバイスで、ここでも短時間でそれぞれの騎乗技術がかなり改善されていました。

<コース練習>

 全ての騎乗を終えて、先生から最後に課題の再確認のためのキーワードを一人一人に頂き、講習会を締めくくりました。

 講習会を通して、いかに今まで騎乗する際、自我に埋もれすぎて馬の反応の豊かさに目を背けていたかを思い知りました。その反応の豊かさを体で感じることで人馬の調和が生まれ、その調和の中で馬を動かす。その奥深さや面白さを知り、純粋に「もっと上手く乗りたい」という新鮮な気持ちを取り戻すことができました。

<最後に先生と記念撮影>

鶴見先生はじめ壬生乗馬クラブの方々、2日間本当にありがとうございました。

(普及委員会 担当)